アートな人・山田晋平さん 2/3

更新日:2020年10月15日

まちに関わる○○な人に豊橋まちなか会議事務局がインタビューして○○を深堀する「となりの“まちびと”たち」をお届けいたします。
1人目は、アートな人ということで、水上ビルの自宅兼アトリエ「冷や水」を拠点に活躍されている舞台映像作家の山田晋平さん。今回は「第2回 芸術と教育と豊橋のまちについて」お届けします。(取材日2020.9.4)

No.1 映像作家 山田晋平さん
舞台映像作家。1979年生まれ。京都造形芸術大学卒業。
演劇やコンテンポラリーダンスを中心に、様々な舞台芸術の上演内で使用される演出映像の制作が専門。2013年から愛知大学文学部メディア芸術専攻准教授。2020年3月に退職。4月より水上ビルにアトリエ兼住居「冷や水」(豊橋まちなか会議/まちじゅうステージプロジェクト)をオープンした。

第2回 芸術と教育と豊橋のまちについて

事務局K  大学で学生に芸術を教えるときに大事にしていたことってありますか?

山田さん ありました。知識とか技術を教えるという事ではないんですよね。芸術は。…そもそも、これは人に教わるものなのだろうか?ということを自分に問い続けながら学生と接していました。なぜなら、本当は先に衝動があって創るものだから。

本当はみんな衝動があると思うんですよ。表現したいという。それをどう無理なく引き出すかっていうことをずっとやってきたと思います。だからその衝動が持てないとか、本当は(衝動が)自分にあることに気づかないみたいな子には、それを形にしたいという気持ちみたいなのを引き出すことを一生懸命やっていました。

僕は作品のうまいへたはあまり言いません。芸術は正解がない世界だという事を言い続けています。正解を出そうとする学生に対しては、正解なんかだしてもしょうがないよ。だって芸術なんだからコレは(笑)って言い続けていました。

事務局K やる気スイッチを探すみたいな感じでしょうか。

山田さん そうです。もし見つからなかったらやめていいとのではと思います。僕には大事ですが、芸術が自分にとって大事な事ではない人もいるわけですから。

衝動を持てた人やそれをうまく引き出せた人たちっていうのは、その後うまくなりたいって自ら思うんですよね。でもやっぱり中にはそう思わない学生もいて、そういう時はそれ以上を詰め込んでも逆にアレルギー反応が出てしまうことが多いので、「やめて違う事を勉強してもいいんだよ。そういう(無理して続けなくてもいい)自由も芸術にはあるんだよ」っていう事も言っていました。押し付けたくありませんし、なにより芸術押し付けられると最悪じゃないですか(笑)

事務局O 好きな人はやればいい。でも芸術を知ってもらう機会はあった方がいいという2つの方向性があるように感じますが。

山田さん  好きになる「きっかけ」がなければ好きになれないのではないでしょうか。そのきっかけを作りたいと考えています。いまこの「冷や水」で月一イベント「水あび」(以下:月イチ 水あび)を開催していますが、次回(第2回)はゲストの方と「スラム街の人における芸術について」をテーマに開催しようと思っています(事務局注:月イチ水あび(第2回)は終了しました)。スラム街に住んでいる人たちは生活もあって芸術を好きになるきっかけって少ないと思うんですよ。でも知れば好きになるかもしれないですよね。

豊橋でも感じていますが、現代美術に触れる機会が少ないと思うから好きになりようがないのでは。僕は現代美術が好きだからそういう事がこの世の中にあることを知ってもらいたいです。

事務局K 芸術の話になったのでずばり聞いちゃいますがアートの価値魅力って何ですか?

山田さん 何億通りも言い方がありますが、ある作品を経験することにより、自分が生きている社会がその作品を見たことによって少し変わって見えるという装置だという事を言いたいです。違う側面があることに気づくことが芸術だと思っています。

だから知っていたつもりのモノが分かんなくなったりする。そういう事が起こります。

そういう経験は必要だと思うんです。社会・人生を肯定することも大事だと思いますが、そして芸術によってそれをすることもできるとも思いますが、一方で芸術がそれを批判することもできるので、世界を批判的にとらえる事の視点ということが僕は芸術だと思っています。そしてそういう視点がないと世の中良くなっていかないとも思っています。

事務局K 芸術のなかでも山田さんが現代美術を選択した理由はありますか?さきほど映画が好きだったと伺いましたが。

山田さん どうしてかな。流れかな(笑)。美術系の大学に行ったのでそこで触発されました。

事務局K 2016年に開催された「あいちトリエンナーレ2016(以下:トリエンナーレ)」について伺いますが、豊橋が会場の一つになったことの効果についてどう感じていますか?

山田さん 一番大きな効果は、僕がこのトリエンナーレがきっかけで、水上ビルに住むと決めたことです(笑)

事務局O それ大きいですね(笑)。

山田さん もう少し具体的に言いますと、トリエンナーレでこの水上ビルが会場になって、毎日「みずのうえ」で映像作品を子供と作ったりして、手伝ったりしたあの時ですね。あれがなかったら黒野さんと仲良くなったり、水上ビルの価値に気づいたりできなかった。そしてここに住むこともありませんでした。よってそれが一番大きいです(笑)。トリエンナーレがいまの人脈をつくるきっかけになった。何よりそこが大きかったです。

一方でまち全体の効果で言うと、豊橋の人たちが一度のトリエンナーレで現代美術を好きなったかどうかってことは、検証しがいのないところじゃないかと思っています。僕が感じたことは、どちらかっていうとこのトリエンナーレを運営してくれた皆さんがずいぶん現代美術に興味を持ってくれたので敷居が下がったんじゃないかな、という点です。それを感じたのが2019年に豊橋がトリエンナーレの会場じゃなくなって残念だったという声があったように思った時です。「残念だ」って思う事って結構大きい事ではないでしょうか。来てほしいという気持ちに2016年の開催を経てなっていたわけですから、そういう感覚はすごい大きい事ではないかなって思います。

また、このように2019年にトリエンナーレが来なくて残念な気持ちを共有できたことが、芸術の普及という事をこのまちでやれるなという事をなんとなく感じた理由だとも思います。

豊橋にはそういう気持ちの土壌があったので、僕はここで芸術の種まきができるかもしれないと思ったんですよね。この出来事を通じて潜在的にそういう事を楽しみにしている人がいる、待っている人がいるんだということが分かったから。

事務局O 豊橋は(表にあまり出ない)芸術をいいな、見たいなと思う需要と、それを供給する芸術家側のバランスが、潜在的には需要の方が大きいのかもしれないですね。一方で東京や都会に行くとそれがイコールになっているのかも。ただその需要が未だ潜在的なので、豊橋にいらっしゃる供給側の立場の方からすればやっぱり発表する機会が少ないなというジレンマもありそうな気がします。絶対的な発表の機会が多い東京に行ってやっと機会が得られるという人は多いと思うんですよ。豊橋のような場所でこうなったら供給する人が増えるのにって思う事ありますか?

山田さん そうなんですよ。「月イチ 水あび」なり、僕がかかわっている作品を豊橋で発表しようと思っているんですけど、なんでできないんですかねっていうところが難しくて。一つには・・単純に資金なんです。作品を作って発表するには資金がかかる。場所を借りるなど多くの人がかかわりますし、そういうことが得られるフレーム・仕組みがこの街にはない気がします。僕はこれからそこを頑張って探さないといけないと思っていまして、先の「月イチ 水あび」も、もっといろんなところからゲストの方を呼び、謝礼とか交通費とか払えるようになりたいです。しかしそういう事はどこに相談していいのか分かんない。Oさんに相談しよって今思いましたが(笑)

事務局O 十分な予算はありませんが…

山田さん いやいや、予算があるのとないのでは雲泥の差ですからね。それは一例として、公がそういう市民がやっている芸術普及活動に対して助成金みたいなのを用意してくれるとか、そういう事がないと、やっぱり実現しにくいのではないでしょうか。

事務局O 東京で活動されるときは資金の出どころはどこが多いんですか?

山田さん いろいろなパターンがあります。僕は公共の劇場が多くて、文化庁の助成金とか、例えば横浜・豊橋・福岡など複数の都市が連携して集めたりして作品作りを行うのが多いです。チケット収入は微々たるものです。

事務局K 山田さんが豊橋に根を下ろした理由は人と人とのつながりが多いなと思うんですけど、豊橋の人間は他の都市の人と気質の違いは感じますか?

山田さん まったくないです。考えたことがありません。ひとりひとりみんな違う人だなって思います。地域による気質の違いを唯一感じるのは東京です。僕、東京の人の感じって雰囲気でわかるんですよ。面白いこといっぱい言うなぁ東京の人は。みたいな(笑)。会話途切れないようにすごいしゃべる人とか。

事務局K 僕も昔は女の人と間を開けないように気を使っていましたが今は気にならなくなりました(自爆)

山田さん 事務局O …

山田さん でも僕は東京に住みたいと思わないんです。

事務局O それは意外です。一般にはこの場所に住もうという決断をするときに、仕事の機会が多いのが大事と感じる方が多いと思うので、そうするとやはり東京の近くに居たいと思う人が多そうなイメージがありました。

山田さん 単純に東京での生活はコストも高いし移動も大変。個人的には生活のコストは安い方がいいし、移動の時間は少ない方がいい。仕事だけじゃなくてただの生活でもです。ここ(豊橋)に住んでいたらある程度全てがそろうじゃないですか。移動時間にしても、豊橋から新幹線で東京のある劇場に行くとなると、場合によっては東京近郊からくる人と比較してもほとんど同じ時間で行けます。さらにこちらは新幹線で座って行けますが東京近郊では満員電車に乗らなくてはいけないなど。そういう点で、地方は生きていくストレスが断然少ないと思います。豊橋は食べ物もおいしいし、サンヨネさん(事務局注:株式会社サンヨネが経営する昭和48年創業の食品スーパー。”豊かな家庭は明るい食卓から”をモットーに東三河に展開)があることとか。新幹線とサンヨネさんが大きいです。サンヨネさんの存在が大きい(笑)。

事務局K サンヨネさんはオリジナル商品が売れ筋って聞きました(笑)

山田さん サンヨネオリジナル、いっぱい買ってますよ。地方も東京と比べて生活しやすいですよ。そのことって意外と知らないんですよね。地方都市の方って。

事務局O 広告とか、仕事が地方にはないイメージでしたが、言われると確かにここから仕事に出かけるという生活だとしたら、生活はしやすいかもしれませんね。

山田さん 仕事に関しては真逆に考えていて、豊橋(東京以外)には一見仕事がなさそうなところに仕事があるんじゃないかと思っています。例えばデザイン事務所も豊橋にはあるでしょうが、少ないと思います。そこに僕が違うテイストを持っていったら、新鮮ではないでしょうか。一方東京ですとデザイン事務所も選択肢が多すぎて飽和している。一見仕事はなさそうですが、さっきの潜在的に種まきを待っている人がいるのと一緒で、おそらく映像で何か発信してみたいとか、そんなこと豊橋でできるわけない、と思っていても、実はできることがわかったら一気に来るかもしれませんよね。「それはできますよー」という営業を僕が地味にしていけば、きっと仕事はあると思っています。

事務局O 2000年くらいからイノベーティブな人、誤解を恐れず極論ずるとアート関係者をたくさん住まわせた都市が勝つみたいな話があって現実に取り組んでいるところも多いじゃないですか。

山田さん はい。

事務局O どういうところにアーティストと呼ばれる人が行きたがるのかなってずっと疑問に思っていて。仕事の機会の多そうな大都市という感覚だったのですが、今の話を聞いていると、需要(仕事)が見えるようになると、もうすこしアーティストの方も来やすくなるのかなと思いますがどうでしょうか。どうすると山田さんのような方が住むのかな、と。きっとアートにつくお金も大事なのでしょうけど。

山田さん お金はアーティストが自ら稼ぎます。豊橋で稼がなくても他の地で。どうしたらアーティストが住むようになるかというと、僕の言い方ですと「豊橋という地から現場に出かけていくことをしたいか?」ということです。
したがってシンプルに生活の部分がアピール出来たらいいのではないかと思います。なぜなら僕が住んだ理由は水上ビルという建築的な魅力に惹かれた部分が大きいですし、あとは新幹線とサンヨネさんっていうね(笑)。さらにそこにはコミュニティがあって人が集まって面白い人がやってくる。仕事にならなくても一緒におもしろい遊び、イベントがちょっとできる、軽い気持ちでやってみるとか。そういう事がやりたいまちだってことが思えることができたなら人は来ると思いますね。
そこに仕事が発生してくればなおのこと住みやすい場所なのでしょうけど…。でもどうでしょう。仕事のことは気にしなくてもいいんじゃないでしょうか。自分で見つければいいんですよ。(笑)

事務局K 山田さんの感覚ですと豊橋で仕事をするというより豊橋から出ていくイメージなんですね。生活の拠点がここ豊橋だと。

山田さん そうです。でも最近新たな発見もありました。僕の活動は基本的に外に出ていくイメージなんですが、このコロナ禍で外へ行く仕事ができなくなってしまい、困ったなと思っていました。そうしたら穂の国とよはし芸術劇場PLATの方でもコロナ禍で事業のやり方を見直さなくてはいけなくなっていて映像配信のまとまった仕事を頂くことができました。
その仕事を通じて気づいたんですが、そういう自分の住んでいるまちのために仕事をするということを、実は初めてまじめにやったんです。そうしたら成果物をけっこう周りの人たちが「見たよ」とか言ってくれて、僕の仕事に対して喜んでくれている顔が直接見えて住んでるまちの仕事をすることがこんなに気持ちのいいことなんだと気付きました。こういう仕事は、ちょっとずつ増えたらいいなと思います。

事務局K コロナがきっかけで住んでいるまちに目が向いたんですね。

山田さん そうともいえますね。

(第2回 芸術と教育と豊橋のまちについて 終了)

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